インジェクション・チューニング

インジェクション

インジェクション

燃料噴射の事。以前のキャブレターを使用していたハーレーはすでになく、2005~7年前後から全てのハーレーダビッドソンでインジェクションを使用している。以前はスロットルを捻ると燃料が負圧でキャブレター内で吸い出されていたが、今はインテークポートにあるインジェクター(燃料噴射装置)で噴射している。
それに伴って、インジェクション車では燃料タンク下部に燃料ポンプが設置され(圧力をかけないとインジェクターで噴射できない)、車載コンピュータが装備されるようになった。

ECM:車載コンピュータ

ECM:車載コンピュータ

インジェクション車は燃料の噴射量を制御するのにECM(Electric Control Module)と呼ばれる車載コンピュータが装備されている。
ハーレーのECMはシートの下やサイドカバーの中、エンジン後方に装備されている。
ECMはエンジン温度や回転数、O2センサーやその他多くのセンサーの信号を読み取り最適なエンジンコンディションになるよう燃料噴射を調整しているが、その他多くの信号を制御し、異常があればメーター内に表示したりしてる。

インジェクション・チューニング

インジェクション・チューニング

インジェクション車は燃料の噴射量を車載コンピュータが決めている。利点は温度などの条件で燃料の濃さを変えたり、スロットルオフなど不必要な時には燃料を少なくして燃費をよく出来ること。
問題は、マフラーやエアクリーナー等を変えた時。
4輪車にはエアフローメーターと呼ばれる吸入空気量を計測するセンサーが装備されているが、ハーレーダビッドソンにはセンサーが無く、流入する空気量は判らない。その為、コンピュータの中に回転数とアクセル開度に応じた空気の充填効率というマップを持っている。
マフラーやエアクリーナーを変えてしまうと、シリンダーに吸い込まれる空気量が増える。空気量が増えても燃料噴射量は変わらないのでシリンダー内の燃料が薄い状態になってしまう。燃料が薄いとパワーやトルクが出ないだけでなく、シリンダーの発熱が増えたりもする。
実際にチューニングが必要かどうかは、マフラーの種類やハイフローエアクリーナー(ノーマルより効率の高いエアクリーナー)装備の有無で変わってくる。
増大した流入空気量に合わせて燃料も増やしてやればノーマルよりも大きなパワーになる。この調整作業をインジェクション・チューニングと呼ぶ。

O2センサー (オーツセンサー)

O2センサー (オーツセンサー)

初期のインジェクション車には装備されていなかったが、すぐにハーレーにも4輪車と同様のO2センサーと呼ばれるセンサーがエキパイに装備されるようになった。

O2 センサーは前後のエキパイの裏側に隠れている。
O2センサーはエキパイ内の排気ガスの酸素の量を計測し、燃料の濃い薄いを判断して燃料噴射量を調節することできれいな排気ガスと良好な燃費を保つようにコンピュータが制御している。
コンピュータのマップ(燃料噴射量)が装備されているマフラーやエアクリーナーの特性と違っているとO2センサーでは調整しきれないのでインジェクション・チューニングが必要になってくる。

O2センサーにはナローバンドセンサーとワイドバンドセンサー(ノーマルは全てナローバンド)があり、大きさも18mmの物と12mm の物があり車種と年式で異なってくる(詳しくはカスタムガイドを参照)。

アフターファイアー

アフターファイアー

マフラーやエアクリーナーを交換して空燃比が薄い状態になると、アクセルを戻した時に“パン、パン”とマフラーで音がしたりする。
アフターファイアーと呼ばれる現象で、スロットルを戻した時に燃料を減らして薄い状態にしているが、マフラー交換やエアクリーナー交換でシリンダーの吹き抜ける混合気が増え、しかもシリンダー内で燃焼するには薄すぎるので、高温のエキパイ内で燃焼してしまう事による。
(アフターファイアーはエアクリーナーから吹き返して爆発するバックファイアーという危険な現象とは異なる。)
アフターファイアーは全閉状態の低い回転数で出る“ポンポン”といった 軽いものであればあまり気にしなくてもよいが、“パン”と大きな音を出す場合はライダーも気になってしまう。インジェクションチューニングを行って薄い状態を改善してやるとアフターもあまり出なくなる事が多い。
さらにアフター用の対策をインジェクション・チューニングで行える事もある(方式やチューナーのスキルにも依存する)

フューエルパック

代表的なインジェクション・チューニングの方式

ハーレーのインジェクション・チューニングにはいくつかの方式があり、コストや効果が変わってくる(詳しくはカスタムガイドを参照)。

①フルコン
燃料制御専用のコンピューターを車載コンピュータの他に追加し、O2センサーもワイドバンドに交換する方式。

②車載コンピュータ書き換え方式
ハーレーの車載コンピュータでは空燃比や空気充填率などのマップ(回転数とアクセル開度に応じた噴射量を制御)を内蔵しているが、4輪車によくあるROM交換を行わなくても、電気的に書き換えが可能な方式を取っている。
この書き換えを行うデバイスが必要で、ハーレーではこの方式が現在は主流で様々なデバイスが利用できる。パソコンが必須のスーパーチューナーや、液晶で行うパワービジョン、スマホで行える Fuelpak FP3など。

③サブコン方式
車載コンピューターの外側に燃料の調整を行うデバイスを追加して制御する。燃料の補正はサブコンで行う。

④エンリッチナー
O2センサーとECMを接続するカプラーを外して接続する。
O2の信号を変えて、“まだ薄い”という信号に変えてECMに送る事で燃料を濃くする。ECMはO2センサーの信号を反映していない時もあり(アクセル全開時など)、効果は限定されるが通常走行時には効果を実感できる。

フューエル インジェクション

燃料噴射装置。キャブレターはシリンダーの負圧により混合気を吸い込むのに対し、フューエルインジェクションでは、燃料を噴射して混合気を作る。コンピュータ制御で気温や気圧その他の条件で、細かく調整できるので、高燃費、クリーンな排気ガスを実現しやすい。

インジェクションチューニングでセッティングしていけば任意の回転数と任意のスロットルポジションでの空燃比を変更したりできるのでノーマルよりパワーアップが可能で、搭載したマフラーやエアクリーナーの特性に合わせる事ができ、ライダーの好みにも合わせる事ができる。