参考情報:ハーレーダビッドソンのインジェクション・チューニングはまずVEを合わせる

(以下、スーパーチューナーやパワービジョン、FuelPak fp3などハーレーのECM書き換え型デバイスを使用あるいは検討している人向け)

ハーレーのインジェクション・チューニングを行う時に具体的にはどういうセッティングをするのか?
injection-tuningECM(車載コンピュータ)の管理している重要なテーブル(マップ)に、AFR(空燃比)というテーブルと、VE(充填効率)というテーブルがある。
両方ともエンジン回転数とアクセル開度の2次元のテーブル。このテーブルを変更していくのが燃調の作業。

”燃料が薄い”と言われると、空燃比のテーブルをいじりたくなるが、ハーレーでまず合わせなくてはならないのは、VEテーブル。
ハーレダビッドソンではマフラーやエアクリーナーを変える人が多いが、充填効率が狂ってしまうので、これを合わせなくては他をイジッても無意味。 このVEのテーブルは車種が違う、マフラーが違う、エアクリーナーが違う等で変わってくる。細かく言えば1台1台全部違っている。 このVEテーブルはシリンダーに充填される空気の量を%で規定している。
マフラーやエアクリーナーを変えるとこの値が変わってしまう。ちなみに抜けの良いマフラーに変えて、効率の良いエアクリーナーに変えるとこの値が30%以上も変わってしまう(例えば効率75% -> 110%など)。
燃料噴射はこのテーブルを参考にアクセル開度と回転数で燃料噴射のインジェクターの開く時間を制御している。

実際には空気をたくさん吸い込んでいるのに、このテーブルが変わっていなければ噴射される燃料の量が全然足りない。 すなわちパワーが出ない、シリンダーの温度が上がるという現象が出る。
ひどい場合は、アクセルを開けても”ぼー”と言うだけで回転が上がるまで加速しない事もある。
このテーブルは”勘”ではなかなか合わせる事ができない。
そこでO2センサーの値を使って走りながらデータを取って補正値を出す作業を”オートチューン”(スクリーミンではスマートチューンと呼ぶ) と言う。O2センサーのフィードバックを使うモードをクローズドループと呼ぶ。
パワービジョンもFP3もスーパーチューナーもすべてオートチューン機能を持っているので、カンに頼らずデータを合わせていく事ができる。
(・・・でも、独立管にハイフローエアークリーナーなどノーマルから大きく変わっているとオートチューンではセッティングが出なかったりする(O2センサーが動作しないほどセッティングがずれる為)。特に最初にロードしたマップが合っていない場合は、セッティングに時間がかかったり苦労する事になる。)
もう一つある空燃比のテーブルは変更するならVE値が合ってから。・・・でもノーマルのO2センサー装着車は空燃比をあまりいじれない。 濃くしないとパワーが出ないのは判っていても・・・それはノーマルのO2センサーは空燃比をいじってしまうと正しい値を出せなくなってしまうから。 したがって、ノーマルの薄い混合比で調整していく事になる(ちなみにオートチューンで合わせる事ができるのはVE値のみ)。

時々誤解している人がいるが、インジェクションチューニングすれば、ノーマルより濃くできると思っている人がいる。しかし、ノーマルのO2センサーは混合比14.6:1 の理想空燃比(燃焼した後に酸素が丁度残らない)で調整するためのデバイス。排ガスがキレイで燃費も良いが、パワーを本当に出したければ13.0:1~13.5:1前後の空燃比にしないとノーマルと大きくは変わらない。そうするにはO2センサーをワイドバンドを使用できるデバイスに変えなくてはならない(O2センサーだけ変えてもだめ。配線や電圧が異なる)

下の図はツーリングモデル’09のStage-I(ハイフロー、スクリーミンマフラー用)のデフォルトのマップ。 左の空燃比で赤く14.6(空気14.7対燃料1)とある部分がO2センサーが機能するクローズドループのエリア。 アクセル開度80%以上、エンジン回転4000rpm以上では空燃比14台では薄すぎてパワーが出ないので13.Xあるいは12.5くらいの空燃比に設定されている。
つまりこの領域はナローバンドのO2センサーは機能せず、オートチューンは行えない(オープンループというO2センサーのデータを使用しないモードになる)。空燃比を指定してもその値になるとは限らない(通常VEがこの領域で合っていない)が、とにかく濃くしてパワーを出そうとしているのが判る。

空燃比とVEマップ

ワイドバンドのO2センサーとコントローラーキットにしてThunder Max やPower Vision のワイドバンドセット、マスターチューンなどでセッティングすると、この制限がなくなりすべての領域で空燃比を自由に変更してパワーを出す事ができるようになる。

でも、ノーマルのO2センサーでも、自分でセッティングできるのはある意味幸せだと思う。昔はジェット交換くらいしかなくて、それも敷居が高かった・・
自分でセッティングする時は良く学んでからにしましょう。マニュアルやヘルプファイルにも英文だけど詳しく書いてある。
もしくは良いショップで教わりましょう・・

参考情報:ハーレーダビッドソンのインジェクション・チューニングはまずVEを合わせる への2件のコメント
  1. まさ

    こんばんは、誰かわかる人いたら教えてください。ソフティル 2014年式 FLSTC マフラーを変えて、サムソンマフラー左右を取り付けました!チューニングした方が良いのでしょうか?

    1. worldmotor

      乗ってみて、トルクの低下やアフターファイアーなどの不具合が無ければ、特にチューニングしなくてもOKです。
      サムソンなどの両出しでエキパイが細くて長いエキゾーストはある程度排圧がかかるので、それほど不調にはならないかと思います。
      短いエキゾーストの方が影響が出やすいと思います。
      あと、エアクリーナーを同時にハイフローに変えるとチューニングしないと辛いかと思います。
      アイドリングを少し落とすと更にハーレーらしさが増すので、個人的にはチューニングをお勧めします。

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